前回はリチウムイオン電池の長所と短所について述べました。
懐中電灯を使っていると、もはやリチウムイオン電池を手放すことはできません。 日本国内ブランドではリチウムイオン電池はまだ…
今回は、リチウムイオン電池の最大の短所ともいうべき、安全性の低さについて説明します。
リチウムイオン電池の安全性
これはリチウムイオン電池の最大の欠点と言えるものの一つですが、リチウムイオン電池の安定性は高いものではありません。
有名なところでは、
- UPS航空6便墜落事故
これは原因がリチウムイオン電池と特定されている。 - アシアナ航空991便墜落事故
こちらは原因の特定はできなかったものの、リチウムイオン電池も墜落の原因と疑われている。 - ボーイング787のバッテリー問題
こちらは墜落には至らなかったものの、重大インシデントが複数起きている。
と、航空機1機を墜落させ、1機は原因と疑われ、飛行中に火災を起こした数はそれ以上に及びます。
B787は一時期全世界で運航停止処置が取られてしまったほどですね。
また、いまは数自体は減ったものの、ノートPCやスマホ・モバイルバッテリはたまに発火事故を起こしてますね。
ここからも、リチウムイオン電池の不安定さがわかるでしょう。
以下、それら危険な要因を列挙します。
連鎖発火
リチウムイオン電池は熱にも弱く、火に晒せば炎上・爆発します。
ここで危険なのは、集積された一本が高熱化・発火・炎上した場合です。
なにせ、熱に弱い電池が集積されていた場合、その中の1本が燃えれば残りも連鎖的に燃え上がることを意味していますから。
家で万一ボヤを出したときも同様ですね。リチウムイオン電池が火に触れたら、そこからさらに一気に燃えることでしょう。
消火の難しさ
リチウムイオン電池は通常の水では消えません。
大量に思いっきりかければ話は別なのですが、コップの水をかけた程度では「逆効果」でしかありません。
また、一部の消火剤も役に立ちすらしません。UPS航空6便墜落事故の際も、消火剤はあったもののリチウムイオン電池には不適合なものでした。
消火方法
では、どのように消火するのかも一応述べておきましょう。
- 専用の消火器を使う。家庭や企業に置かれた消火器でも、大概消火できるでしょう。
- 大量の水をかける。少量の水では役立たずでも、大量の水なら話は別です。
- 砂に埋める。要は酸素を遮断するわけです。
このような方法がありますね。参考までに。
釘打ち等の耐性の弱さ
ニッケル水素電池や乾電池は、貫通傷という大ダメージを与えても炎上はしません。
液漏れ・発煙などはするでしょうが、そこで止まってくれます。
しかし、リチウムイオン電池はそうはいきません。発煙・発熱、そして燃えてしまうほどには危険なのです*1ただしこれは、正極材料、たとえばコバルト系・マンガン系・ニッケル系等により若干異なる。
衝撃にもさほど耐性はないため、総じてデリケートな電池といえるでしょう。
過充電・過放電への耐性の弱さ
電池を満状態を超えてさらに充電を継続してしまう行為が「過充電」、その逆で下限を超えてなお使用してしまうのが「過放電」です。
過充電の場合、最悪電池が発火します。
過放電の場合、電池が消耗しきったまま二度と充電ができなくなる可能性があります。
したがって、充電に関しては電池自体に保護回路を有するものを使うか、充電器自体が過充電保護機能を有するものを買った方が望ましいです。
過放電については、保護回路を有するか、機器側に保護回路を持つものを選定すべきでしょう。
過放電の要注意事項
過放電については1点大きな落とし穴があります。
複数の電池を使用する際に電池の容量や性能が均等ではない、または異なる充電状態から使用開始した場合、そのうち容量が少ない1本が先に空になってしまい、過放電を引き起こす可能性があります。
リチウムイオン電池を複数使用する場合は、同一容量・ブランドの電池を使用し、同一の充電状態から使用するよう心がけましょう。
こんなに欠点があるのに?
こう書くと、リチウムイオン電池はその安定性・安全性に明確に問題点があるのは否定しがたい事実でしょう。
しかし、前回書いた長所などの長所、すなわち
- エネルギー密度が高い
- 電圧が高い
- 大電流を引き出しやすい
- メモリ効果がない
- 自己放電が少ない
- 充電・放電効率が良い
- 使用温度範囲が広い
そのうえ、割と何にでも使えるメリットはやはり捨てがたい、というか他に代替が利かない重要な要素といえるでしょう。
注釈
↑1 | ただしこれは、正極材料、たとえばコバルト系・マンガン系・ニッケル系等により若干異なる |
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